焚き火料理に温度計はない。
全ては五感で感じ取る。
決して思い通りにはいかなくて、
温度、湿度といった外気にも左右される。
からりとした冬は、よく燃える。
燃える温度を肌で感じ、
弾ける音に耳を澄まし、
沸き立つ香りを嗅ぎ、
瞬間を逃すとたちまち焦げる。
感覚が開かれるから、
好きなのだ。
昔、修行時代にレストランで、
それは確か、研修初日か二日目のことだった。
レストランという場所で、
初めて働いた時のこと。
この料理は何度で何分焼くのですか?
とシェフに尋ねたら、
オマエ何言っとんねん、そんなアホなこと聞くな!
と一蹴された。
その時は全く理解できなかったが、
今はとても分かる。
それが感覚というやつだ。
感覚は経験。
鹿の脛と蕪を煮込む。
じっくりじっくりと。
Photo Daisuke Takashige
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